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「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

3 見えない牢獄

 見えない牢獄

 いつ人は自ら死を選ぶのでしょう。

 職場への不満でしょうか。
 家庭への不満でしょうか。
 社会への不満でしょうか。

 私には良く判りません。

 いつ人は死を考えるのでしょう。

 職場から逃げ出したいからでしょうか。
 家庭に居辛いからでしょうか。
 社会と上手く付き合えないからでしょうか。

 私には良く判りません。

 何故、死から逃れられないのでしょう。

 職場から逃げ出せないのでしょうか。
 家庭から逃げ出せないのでしょうか。
 社会から逃げ出せないのでしょうか。

 私には良く判りません。

 生活できないから。
 自分に自信が持てないから。
 将来が不安だから。

 『パンドラの壺』の寓話を思い出します。
 『壺』を開けると全てのものが世の中に飛び去っていきました。
 悪意、憎悪、妬み、不満、全ての悪しきものが世の中に飛び散ってしまいました。
 最期に残ったものは何でしょう。

 『OMEN』

 全ての悪しきものが充満する世の中に『OMEN(将来への予見)』だけが『壺』に取り残されました。

 『将来を予見できない』ことが、『希望』に繋がるというお話です。

 元々『希望』の源泉であった筈の『予見できない将来』を、何時から人は恐れるようになったのでしょう。

 職場で出世したからでしょうか。
 子供が生まれたからでしょうか。
 社会に自由があるからでしょうか。

 組織の頂点に立っても定年すれば唯の老人です。
 子供は老後を養ってくれるのでしょうか。
 何処の社会に『自由』なんてあるのでしょう。

 今の生活に満ち足りた振りをして、
 敢えて将来は見ないようにして、
 自分を欺いて生きているのかも知れません。

 それが今の『希望』なのかもしれません。

 見えない牢獄で、
 見えない手枷、足枷を、
 見えない鎖で繋がれた囚人がいます。
 見えない看守が見張っています。
 見えない社会がソッと伺っています。

 何故、逃げないのでしょう。

 いつ人は自ら死を選ぶのでしょう。
 いつ人は死を考えるのでしょう。
 何故、死から逃れられないのでしょう。

 少し判った気がします。


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